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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)1000号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人両名の平等負担とする。

理由

被告人両名の弁護人光石士郎、同吉永光夫の上告趣意第一点について。

論旨は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(入場税は、月を標準として申告、課税、徴収する月税であって、その逋脱罪もまた月を標準として罪数を定むべきである旨の原判決は、正当である。)

同第二点について。

入場税法二八条は、興行場等の経営者又は主催者(以下、単に経営者等という。入場税法三条参照)。たる人の代理人使用人その他の従業員が同法二五条一項等に違反した行為に対し、経営者等に対し右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかった過失の存在を推定した規定と解すべく、したがって経営者等において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、経営者等もまた刑責を免れ得ないとする法意と解するを相当とする(昭和二六年(れ)第一四五二号同三二年一一月二七日大法廷判決、刑集一一巻一二号三一一三頁参照)。それ故、同法二八条によって、経営者等は、無過失責任を負わされ、他人の犯罪行為によってこれになんらの関係もなく刑事責任を問われる、との前提に立脚して、これを違憲立法であるとする所論は、前提を欠き理由がない。

記録を調査するに、経営者たる被告人政次において、判示行為者被告人正喜の判示違反行為につき、これを防止するため必要な注意を尽したことの主張立証の認められない本件において、被告人政次に対し同法二八条の適用を肯定した原判決は、正当であるといわなければならない。

同第三点について。

論旨は、事実誤認と単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また、記録を調べても、本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条、一八一条一項本文により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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